エレベーターってほんと・・・
あ、すみません!乗ります!ちょっ!
って間一髪で乗り込んだエレベーター内がね、カップル絶賛口づけ中だった。
いや〜、こっちも飛び乗る瞬間くらいからね、「あ、バックしろ」って信号を脳に送ったんだけども。
宙を舞ってる体が自ずと入っていって、扉閉まるわけ。嘘だろ。
なんつーか、俺一回も行ったことないんだけど、地獄ってここじゃね?って思ったもん。まじで。
ほんと、閻魔大王も、ここで天と地の審議を行うべき。
三途の川じゃなくて、ここで労働させるべき。
んでまあ、彼女の方がさ、
「だめだよ。見られちゃうよ。」
とか言ってくれてんですけど。
「大丈夫だって。見てないよ。」
つって言うこと聞かない彼氏。
「だめだって。」
「大丈夫。見てないよ。」
「見てるって。」
「大丈夫だって。」
「見てるってば。」
つって私思いっきり見てないんですけど。
狭いエレベーターの一角に顔面めり込めるようにして見ないようにしてるんですけど。
したらさ、3階で禿げたジジィ乗ってきたの。
天使かな?
ほんと、天使も一回も見たことないんだけど、サインほしかった。写メいいですか。
禿げた部分とかもう完全に天使の輪っかにしか見えない。
やってきたぞ、俺らのターン。と。
まぁね、ここぞとばかりにめり込められた自分の顔を最大限大きくしてね、ちょっとスペースも確保しつつ、避難の目を禿げ天使と共に浴びせた。
「公共の場ですよ。」って。
禿げ天使とか軽く咳払いとかしてたもん。
そりゃあ先輩にならって私もいつもより多めに咳払いしてね。
もう勝ったと思った。
したらさ、あの禿げ天使、4階で降りやがった。
まさかの展開。
そうなったらもうただのクソ禿げ。
ここぞとばかりに確保したスペースがね、思いのほか広くてね、なんつーか、3人でPerfumeみたいになってんの。
どうしてくれる?これ。
まじやべぇ。と思ったよね。私も。
んで、ズボンのポケットに入ってた携帯を取り出して見てないアピールしようと、ガサゴソガサゴソやってたんですけど。
ほんと、岸に打ち上げられた魚のごとくピチピチいっちゃって、落ちてった。床に。
しかもカップルの間で絶妙かつピンポイントに止まったよね。ゴール。
ほんとびっくり。
今ならあの貞子の井戸も登れる気がする。
つーか、黒髭危機一髪ばりの勢いで井戸から出れる気がする。
んで、目的の8階に着いたわけです。
反射的にカップルの間の携帯を蹴って、出口までドリブルしていった。
もう一瞬の出来事。
彼氏なんか「メッシ・・・」って言ってたもん。
まぁ、言ってないんだけど。
んで、なに食わぬ顔してね、華麗に携帯を拾い上げてね。
ケース割れてた。